【人文学系】

タイトル ◆明石の君の女性像
分野  
概要 明石の君は明石入道と尼君の間の一人娘で、父入道の意思により源氏と結ばれる。そして源氏の娘を産むことによって、その運命が大きく変わる。かう言ふ幸ひ人の腹のきさき后がねこそ、また追ひすがひぬれ。(「少女」二九頁)(注1)このように内大臣と大宮の会話の中で明石の君は「幸せを得た人」と言われており、源氏と結ばれたことによって世間の人から「幸ひ人」と思われていることがわかる。確かに表面的に見ると、身分低い女性が源氏に見初められて、その娘が中宮になるという、いわばシンデレラストーリー的な部分もある。しかし、実際の明石の君の人生を見てみると、三歳の娘と引き離されて、夫の一番愛している女性の養子にされてしまう。以来、娘とは会うことすら出来なくなり、成人して再会できた後も、自分は女房として娘に仕えることになる。娘は実の母親よりも育ての母親である紫の上の方を母親として感謝している。(「若菜上」八十三頁・「若菜下」一五九頁)最後まで、実母である明石の君は女房として一歩引いて自分を卑下し続けた。その様な生き方をしている明石の君は、果たして幸せなのか、疑問を抱き、明石の君の生き方に興味をもった。明石の君の一生を、明石の浦、大堰に住んでいた時代、六条院で明石の姫君が入内するまで、明石の姫君が入内した後に分けて、明石の君の心の変化を追い、その女性像について調べる。
特徴・オリジナリティ 「明石の君」と言う一人の女性に焦点を当て、その生き方や、考え方を研究した。
大学・専攻 国立富山大学、言語文化学科
タイトル ◆若者ことば
分野 日本語教育・国語学
概要 10代を中心に、今、ことばはどんどん平板化している。たとえば、「彼氏」。最初にアクセントを置くのが本来のはずだが、若者たちは語尾を平板にして発音する。  なぜ、ことばは平板化されてゆくのか、その理由を考察した。また、すべての年代に平板化現象が起きているのかを調査した。  また「ドタキャン」は土壇場で約束をキャンセルすることだが、これは若者にしか通用しないことばなのか、それとも他の年代にも通用することばなのかどうか、を考察した。
特徴・オリジナリティ 10代から50代まで、200人にアンケートを実施した。アンケート内容は、例えば「彼氏」を発音するとき、自分ならどのように発音するかを書いてもらった。 また「ドタキャン」「キムタク」「チョムカ」などを挙げ、自分が意味を知っていることばを選んでもらった。この調査によって、単なる流行語なのか定着している語なのかを判断する材料となった。
大学・専攻 私立(東京都)、日本文学科
タイトル ◆接触、打撃に関する動詞の統語と意味
分野 言語学、日本語学
概要 日本語において「継続する働きかけ」というアスペクト特性を表す動詞は、「〜をたたく」や「〜にさわる」など接触、打撃に関する動詞である。これらはヲ格をとるものとニ格をとるものがある。また、「〜を目指す」「〜に挑戦する」なども、直接的な接触、打撃を表す動詞ではないがやはり「継続する働きかけ」というアスペクト特性をもっている。これらの動詞もヲ格をとるものとニ格をとるものがある。 これらがなぜ異なる格をとるのかを考察したのが、本論文の概要である。
特徴・オリジナリティ 従来「状態変化動詞」でないもの、としてひとまとめにされていた動詞群に焦点を当て、細分化した点。また、格交替という統語現象がこれらの動詞のアスペクト性や目的語の名詞句などの違いに関わっていることを示した点。
大学・専攻 国公立(茨城県)、日本語
タイトル ◆トンパ文字に関する一考察
分野 アジア研究
概要 「トンパ文字」とは、本来「ナシ族の中のトンパだけがトンパ教のために使用する文字」である。しかし現在、文字の非宗教的使用側面が増加していることから「宗教文字」という定義を外せる可能性があり、今後は「宗教文字」という定義を外した研究ができるのではなかろうか。したがって、この論文では、現在のトンパ文字使用場面を分類し、なぜ文字の使用場面に変化が現れたのかを分析する。
特徴・オリジナリティ 「トンパ文字」を視覚的特徴から定義付けした点。 @トンパ教とは関係のない使用方法であることや、Aトンパ教の規律に反した使用者が存在するという、二点の非「宗教」的要素を除けば、文字に含まれる意味も文字の字体も「トンパ文字」と言える、とした。
大学・専攻 東京学芸大学 文字学
タイトル ◆国語・国字問題としての言文一致
分野 アジア研究
概要 言文一致を国字問題として捉えて資料をあつめたもの
特徴・オリジナリティ 資料集め。多くの資料を集めた点
大学・専攻 大学−
タイトル ◆堺町衆と茶の湯の関係
分野 文化史、日本中世茶道史
概要 茶の湯の歴史においては、茶道を確立した千利休が大きなターニングポイントとなっているが、千利休以前には堺の町衆が茶の湯という文化を形成する上で大きな意味をもっていた。勿論利休自身、堺町衆ではあったが、それ以前にも津田宗達・宗及や今井宗久ら有力な堺町衆は、茶の湯の歴史において重要な働きをしていた。それは後に茶湯御政道といわれた茶の湯と政治の結びつきにも深く影響していたといえよう。本論文では、彼らを中心に、千利休以前の茶の湯形成過程と、そこに見られる堺町衆の茶の湯の独自性について考察してみた。
特徴・オリジナリティ 従来の研究ではあまり見られなかった、津田宗達・宗及や今井宗久の茶の湯について、具体的な茶の湯の姿を考えてみた。
大学・専攻 私立(東京都)、史学科
タイトル ◆解体新書について −蘭学事始をもとに−
分野 日本史近世(江戸時代後期)
概要 解体新書は、日本で初めての医学翻訳解剖書だと言われているが、そうではないらしい。また、解体新書とは「ターヘル・アナトミア」を翻訳したものだと言われているが、この「ターヘル・アナトミア」というのは、正式名称ではないらしい。まずはその2つについて、調べて書いた。あとは、訳者の一人杉田玄白の自伝「蘭学事始」をもとに、解体新書が出来るまでの過程や背景を出来るだけ詳しく書いた。
特徴・オリジナリティ 杉田玄白の交友関係について興味があり着目した。 「解体新書」の訳者の中でも杉田玄白と並んで有名な前野良沢のことや、エレキテルで有名な平賀源内と仲が良かったことなど。
大学・専攻 帝京大学、史学科
タイトル ◆親族・君臣関係から見た古代日本の外交秩序
分野 古代史・対外関係史
概要 本論文では古代の日本が唐・新羅・渤海とどのような外交関係を志向し、また実際に関係を結んでいたかを考察した。従来の古代対外関係史では西嶋定生氏の「東アジア世界論」に立脚し唐と周辺諸国・特に韓半島諸国との君臣関係を中心に立論し、その縮小版として日本の対外関係を捉える場合が多かった。しかし本論文では君臣関係以外にもう一つの尺度として「親族関係」を用い、「東アジア世界論」では捉えきれなかった「より対等に近い国家間の関係」という視点から日本の対外関係の解明を計った。その結果、明らかになったことは次の通りである。 1 親族関係は国家間の関係と個人間の関係が存在し、国家間の関係は前漢〜南宋(提出後周〜後金に訂正)まで存続した 2 親族関係は君臣関係とも同居するが、より対等に近い関係の場合に親族関係が付せられる 3 親族関係は父子・舅婿・同族・兄弟・舅甥の5種類が隋唐では存在した 4 前者3親族関係は上下関係を前提としており、後者2親族関係は上下関係を前提としていない 5 日本が新羅に対して父子関係を表明したのは、日本が日羅関係を完全な君臣関係と認識したからである 6 日本が渤海に対して兄弟関係を表明したのは、日本が日渤関係をより対等に近い君臣関係と認識したからである(兄弟・君臣という関係は、東アジア周辺諸国間の関係として捉えられる) 7 渤海が日本に対して舅甥関係を表明したのは、渤海が渤日関係を君臣関係と認識していなかったことを示す
特徴・オリジナリティ 従来の「東アジア世界論」にとらわれることなく、東アジア全体での日本外交の位置を探ろうとしたことは新しい視点であると思う。だが逆に、日本史の論文にも関わらずまるまる1章東洋史の範囲を扱うなど、かなりの問題作ではあった。親族関係を扱ったのも新しい視点である(専論は1本しかない)。しかし国家間と個人間のものの差や、時代による差など親族関係について誰もが納得する論にはならなかった。あとどうでもいい特徴として、注が本文を上回ったとか、田中芳樹「アルスラーン戦記」の元ネタとおぼしきアルスラーン王が登場するなど話題には困らない卒論でした。
大学・専攻 国立 名古屋大学、日本史学
タイトル ◆ガイウス=ユリウス=カエサル
分野 古代ローマ史
概要 ローマ帝国の祖,新しいヨーロッパと地中海の創造者ユリウス=カエサルは,欧米諸国では,あるいはクレオパトラの愛人として,あるいはブルータスに刺された悲劇の英雄として,あるいは共和政を倒した暴君として,非常に有名な人物である。有名なだけでなくシェイクスピアの戯曲やハリウッドの映画などでも何度も取り上げられる,非常に「大衆的な」人物でもある。日本でいえば,信長と秀吉と家康を足したような男か。しかし,日本ではカエサルのことが取り上げられることは余り多くない。そこで,ここではその稀有の歴史上のヒーローを,日本人の立場から「太閤記」的に描いてみた。すなわちこの論文が目指したものは,ただ学術的な正確さだけではなく,人間としてのカエサルの魅力である。いわば歴史論文と伝記の中間を狙ったものともいえようか。卒論では(特に外国の人物や事柄を扱ったものでは)何か新事実を発見するということは非常に困難なことである。それを補うものは「想像力」ということになろう。その意味で,本論文は「目の前にカエサルが見えてくる」ということを主眼として書かれている。  本論文では,(1)軍人カエサル (2)政治家カエサル (3)人間カエサルの3つの視点からカエサルに切り込んでいる。そこから見えてくるものは・・・まさに圧倒的な魅力を持つ"The Man of the History"である。
特徴・オリジナリティ 本論文はただの歴史論文にとどまらず,いわば「文学的」あるいは「ジャーナリスティック」な切り口で古代ローマの英雄のことを語っている。そのため読者は,きちんとしたレベルを保った歴史論文でありながらあたかも映画のシーンを見るように,主人公の人となりを垣間見ることができる。その意味でも非常にユニークな論文ということができるだろう。
大学・専攻 早稲田大学 西洋史学
タイトル ◆上毛民権運動の諸相ー群馬事件の社会的背景とその激化過程の検討
分野 日本近現代史
概要 群馬事件は、周知のとおり明治十年代の自由民権運動末期の激化事件の一つである。従来、その概要を知りえた史料は自由党史や東錘民権史であった。一方、群馬事件を秩父事件へ連なるものとして初期困民党、借金党の農民運動として見ていく立場がある。私は、地方史研究に運動論を追い求めるだけでなく、社会的背景の中で、事件像を追い求めた。
特徴・オリジナリティ 従来、良くある運動論を、裁判記録などに依拠して述べるだけでなく、もっと地域構造の経済分析から[なぜ、西毛養蚕地帯という典型的な畑作地帯に激化諸事件は起きたのか?」という分析をおこなった所にある。
大学・専攻 国公立ー埼玉
タイトル ◆西欧中世における色彩について〜黄色にみる社会
分野 史学
概要 色彩とは文化的事象であり、その意味、役割は社会によって規定されるものである。西欧中世において色彩の使用は社会を支配するための手段としての必要性と、染色技術の進歩が複雑に絡み合って決定されるものであった。そして象徴的意味を付与された色彩は、社会において言葉としての機能を持ち、大きな役割を果たしていた。その中で黄色が忌み嫌われ続けたのは、社会が必要としなかったからであると考えられる。
特徴・オリジナリティ 題材と結論が独特
大学・専攻 大学−
タイトル ◆藤井寺市と修羅
分野 考現学
概要 1978年に大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳から発掘された古代の重量運搬具である木製の大小2つのソリ『修羅』は、新聞により大々的に報道されて非常に有名になった。  発掘から約20年を経た今、修羅のことは世間的には忘れられている赴きもあるが、藤井寺市には修羅に関連するものが多数あり、市民には大変親しまれている。しかし、多くの年月を費やし保存処理を終えた後、小修羅は藤井寺市立図書館で保存・展示されているが、大修羅は、出土地である藤井寺市に戻ることはなく、大阪府南河内郡河南町と太子町にまたがる地域に建設された「大阪府立近つ飛鳥博物館」に保存・展示されている。このような状況をふまえ、藤井寺市にとって修羅とはどのような存在であるか、この視点で修羅をみつめたのが、本論文である。
特徴・オリジナリティ 今までに、考古学という視点で捉えられる事が多かった修羅を、考現学の視点から、また藤井寺市とのかかわりという視点からとりあげました。
大学・専攻 京都精華大学、人文学科
タイトル ◆J.S.ミルの自由論研究
分野 倫理学分野
概要 人間が生きていく上で一番高次の欲求とは自由の実現である.他の物質的.社会的欲求が満たされた後、人間はさらに高次の欲求として、自ら人間的に成長したいとか、社会的に役立つことをしたいとか、何か自分で価値があると思う活動をしたいという欲求をもつ。この欲求とはミルによれば、自由が確立され、促進することによって人間は知的、道徳的に一層進歩する.  この人間における精神的向上は個々の人間の不断の努力とそれを保証する社会の進歩が必要なのである。
特徴・オリジナリティ 確実に永続的に人それぞれが進歩していくためには自由はなくてはならないものである。ミルは人間の自由として思想の自由、嗜好と職業の自由、団結の自由を上げている.これらの自由が人間にとって必要であるのは人が自発的に活動するためであって、すなわち、人の幸福と個性の発展につながっていく。
大学・専攻 国公立(京都府)、哲学科
タイトル ◆現代における宗教の意義〜明治期日本の宗教意識の変遷をたどって〜
分野 哲学
概要 明治期日本の思想をたどって、宗教のあり方の変遷を鳥瞰する。そこから現代社会における宗教への態度を考察する。
特徴・オリジナリティ 誰か一人の思想を考察するのではなく、自分の考えに沿って著作を選び、テーマについて論じた点。
大学・専攻 大学−

 


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