卒論 Tips12 ネット時代のお作法

盗作問題から引用、正しいパクリ方まで

昨今、インターネットの普及により、以前に比べると過去レポートや論文を簡単に目にすることができるようになってきた。

当サイトでも、たくさんの論文を検索できるし、紹介している。

しかし、これらをうまく活用するのと、悪用するのでは全く意味合いが異なってくる。

そこで、今回のTipsでは、正しいネット時代のお作法と、盗作・剽窃の危険性について紹介し、更に、積極的にネット上の情報や、過去レポート・論文を参考にする方法として、賢いパクリ方(通称「メタパクリ法」)について紹介してみたいと思う。

著作権保護法で保障されている引用について

まず、ネット時代のお作法について紹介しよう。

インターネットが普及する以前から、レポートにせよ、卒業論文にせよ、大学という学術的な場において創作物の扱いに関してはルールがある。「著作権保護法」である。

この中で特に関連するのが「引用」についての項目。

ネットや文献で見かけた色々な情報や、過去の論文・レポートの内容を参考にして引用し、自分の論文やレポートを書くときのルールについてである。

具体的には著作権保護法第32条というところで、学術・研究目的の場合、「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定め られている。

これは、あくまでも「引用」という形で使う分には問題が無いことを保障してくれるものでもある。

但し、この「引用」の際、いくつかの条件がある(その条件を守った上であれば他人の著作物を引用して使うことは全然OKということだ)。

一方で、そのような条件を無視して 「他者が考え作ったものをそのままパクり、自分の著作物のような顔をする事は法に反する」ということでもある。

そこで、肝心なその条件を意訳して紹介すると、以下の3点である。

  • 自分の意見が主で、あくまでも引用されるものは従の関係にあたるものでなければならない。
  • 引用した部分は、明確に引用したことがわかるようにしておかなければならない。手を加えてもいけない。
  • 引用したものが何であるかを十分明記する必要がある。

一点目は、自分の意見がまずあって、それを補強・補足する為に、“参考までに紹介する”といった形でなければいけないということである。

質的にも量的にも主―従の関係がなければならないのだ。

二点目は、具体的には、括弧書きにして字体を変えるなどして、読む人に、本文ではなく、引用してきた箇所ということが一目でわかるように表現するということである。


公表された著作物は引用して利用することができる

その際、内容を変えたりしてはいけない。

ちなみに、たまに〔ママ〕とルビが振ってある文章を本などでみかけたりすることがあると思うが、あれは、引用したものが日本語上間違っていたり、誤字だったとしても、それを知った上で、引用のルールに厳密に則り、そのまま表現していますということである。

三点目の「引用したものが何であるかの明記」は一種のお作法として、いくつかの項目を明記することになっている。

具体的な引用のお作法

引用元 記述すべき事項
書籍 著者名、著作物名、発行者・出版社、出版年、引用した文のあるページ
論文 著者名、論文名、論文が掲載されていた雑誌・専門誌等の名前(巻や号があればそれも)、年月、引用した文のあるページ
ネット 著者名(機関名)、サイトタイトル、サイトURL、年月日(更新等ある場合)

但し、明記の場所は、文中で簡単に(著者名、年度、頁)を紹介してもよいし、最後の参考文献・引用文献の一覧で上記について紹介してもよい。

なお、上記は大学に限らず一般的に世の中で決められたルールである。

そして、学術的な世界では、一般的な世の中よりも「先行者の発想・考え」を非常に尊重し、それを十分表現するということがとても重要視されている。

自分がオリジナルの発想で書いた論文と、同じ趣旨の事を過去に書いた人がいた場合(それが後になって発覚した場合)、悪いのはそのことを調べ上げずに書いてしまった方になる。

全く知らずに100%自分自身の発想で考え出したとしても、それはパクリとみなされかねないのだ。

また、先行者の考えを十分調べ上げる事を重視するという点では、次のようなことも言われる位である。

  • 「いい論文とは、引用・参考文献がたくさんある論文である」
  • 「更に、参考文献で引用した書籍の頁は最初の方のページ(例えば25ページ)ではなくて後の方のページ(例えば230ページ)の方がよい」。

後者の話はなぜだかわかるだろうか。

つまり、「多くの書籍を読みました。それも目次と最初の方の頁をさらっと目を通したのではなく、きちんと最後まで読みました」ということをアピールできるからだそうだ。

まあ、このような世界に住む大学の先生達を相手にするのだから最小限のルールは守った上でレポート・論文の作成にあたろう。

ルール違反(つまり、他人が作ったものを自分が作ったかのように思わせるオール・コピペ等)が万が一見つかった場合の代償は大きい。

大学によってはその学期の全単位が無効になったり、卒業した後でも、実名を公表し、場合によっては決まっていた就職先も失ってしまったり・・・。

↑こんなことにならないように・・・・

ネット時代の正しいパクリ方(メタパクリ法)紹介

続いて、ネット時代に合わせ、積極的に過去レポート・論文を参考にする方法を紹介しよう。

@卒業論文がお薦めするのが、「メタパクリ」という方法である。

要は、「賢く合法的にパクって楽しようよ!ついでに質とオリジナリティ向上も追求!」ということである(笑)。

では、メタパクリとはどのようなパクリ方だろうか?

それは、「一旦メタ化した上で、再度(自分の思う方向に)具体化してやること」である。

「はて・・・何のことやら、さっぱり?わからん!」と多くの方が感じたかと思う。

そこで、簡単にわかりやすく順をおって説明してみよう。

まず「メタ」とはどのようなことを言うのか?

「メタ」とは物事を一段高い視点に立ってその意味合いを論じたり、抽象化する際に用いられる言葉である。

言葉の説明をしても理解してもらうのは難しいかもしれないので例を見てみよう。

野球の「巨人×阪神戦」をメタ化するとどうなるだろうか?

巨人 対 阪神

東京 対 大阪

関東 対 関西

そして、これを更に「メタ化」すると

都市文化 対 地方文化

強いもの 対 アンチ・強いもの

主流 対 反主流?

といった感じである。

昨今は巨人の地位低下が激しく逆の意味合いをもつかもしれない、2005年度は阪神が優勝して、強いもの=阪神であった。

だが、長い歴史をみると、一般的には上記の表現もあてはまるだろう。

このように一段高い視点というか、カメラのレンズでいうとズームの逆、パーンしてひいた視点で見て表現してみることである。

これがメタ化である。

そして、「メタパクリ法」では、一旦抽象化したものを再度、具体化するのだ。

その際に、元とは違う方向に具体化してやるのだ。

自分が関心のある分野へ、もしくは論じたい方向へ・・・。

例えば、先ほどの例を「関東 対 関西」から戻すと、「ロッテ 対 オリックス」になるかもしれないし、

巨人 対 阪神 ロッテ 対 オリックス
↓(メタ化) ↑(具体化)
関東 対 関西

「都市文化 対 地方文化」とメタ化して、そこから戻すのであれば、「巨人 対 楽天」となるだろう。

巨人 対 阪神 巨人 対 楽天
↓(メタ化) ↑(具体化)
都市 対 地方

例えば、そうなると論じる視点も若干変わってくる。

お金をかけて人を揃えテレビといったマスメディアで戦う巨人と、地域密着型でそれなりの運営収益を賄った楽天といった構図に落とすことも可能である。

これをレポートや卒論のテーマ選定にあてはめてみると、

「トヨタ自動車の戦略について」といったタイトルのレポート・論文をメタ化すると、「自動車メーカーの戦略について」とみる事ができる。

また、トヨタ自動車をどう見るかによって、「業界No1企業の戦略について」ともなる。

トヨタの戦略について ソニーの戦略について
↓(メタ化) ↑(具体化)
業界NO1企業の戦略について

そこから、再度違う方向に具体化すると、「日産自動車の戦略について」となり、「トヨタ自動車の戦略について」で書かれたレポート・論文の目次や構成をそのまま「日産自動車の戦略について」と変えて踏襲できる可能性が高くなる。

また、自動車メーカーという所を電機メーカーに置き換えると、「ソニーの戦略について」とか「松下の戦略について」ということで展開可能である。

この考え方はレポート・論文のテーマを考えるときだけでなく、ストーリー構成(論拠、展開)等、色々な場面で応用できるものである。

内容そのものをパクるわけではないので、他学部、他の専攻分野のレポート・論文であっても参考にし、パクる事が可能になるのだ。

次ページで具体的に事例を紹介しよう。

メタパクリ法の応用方法

メタパクリ法を論文・レポートの骨格であるストーリー構成の検討に活かす方法を考えてみよう。

まず、参考にするのは以下一番左側の欄に掲げている社会学の分野で書かれた「地球温暖化」についての論文である。

内容は目次を見て分かるように、前半で問題の概要について触れ、問題解決の為の色々な取り組み(対策案)を紹介している。

後半ではそれら取組みの中で、どれが一番優れているかを評価し、選定された対策案について詳細を紹介するといった内容である。

このストーリー構成をメタ化して応用するのが今回のテーマである。是非一度、自分の頭を使って考えてみてほしい。

だが今回は一つの例を「内容のメタ化」というすぐ右の枠に記述したので見て欲しい。

書いてあることの意味合いを明確にするよう記述したものである。

ここまでメタ化されれば、この結果を参考に自分の関心のあるテーマにあてはめて論文の構成を考える事が可能となる。

例えば、経営学の分野で、企業におけるCS(顧客満足)の低さ及び、その向上策について問題意識をもちテーマにしたとしよう(仮に消費者金融業界におけるCS向上をテーマとした)。

すると、先ほどの社会学の論文内容をメタ化したものから下記のように展開方法をパクることが可能になる。

社会学:地球温暖化
  1. 地球温暖化問題とは
    1. 概要
    2. 地球温暖化のメカニズム
    3. 実際の変化について
    4. 地球温暖化の影響
  2. 問題の原因と対策案
    1. CO2排出原因
    2. 対応施策案について
      • 自動車制限
      • 生活習慣改善
      • 税制改正
      • サマータイム etc
  3. 各種対策案の評価
    1. 評価方法
    2. 評価結果
  4. サマータイム制度の検討
    1. 概要
    2. メリット、デメリット
    3. 取組の現状
    4. 導入の効果
⬇ メタ化
内容のメタ化
  • 関心のある問題テーマの概要
  • 問題の原因について
  • 問題解決の対策案の紹介
  • 対策案の評価方法提示
  • 対策案の評価結果
    (一番評価の高かった)
  • 対策案の概要
⬇ 具体化
経営学:消費者金融業のCS
  1. CSの低い消費者金融業界の現状
  2. 消費者金融業界の低CSの原因
  3. CS向上の施策・取組み事例
    • TV広告での告知徹底
    • コールセンター設置
    • コミュニティサイトの活用
    • etc
  4. 各種CS向上策の評価方法
  5. 評価結果
    • コールセンターが最も効果的
  6. コールセンターでの取り組み
    1. 概要
    2. ・・・

以上のように、メタパクリ法はどのような視点でも活用可能である。

だからこそ、行き詰った時は、切り口を探す、テーマを探す、ストーリー構成を探す上で、様々な学部・専攻の論文・レポートを参考にしてみよう。

有罪?無罪?パクリの程度別判定

最後に、パクリのやり方や程度別に何が盗作・剽窃として問題になるのか・ならないのかについて、大まかに現実的な指針を考えてみたい。

基本的な考え方として、テーマや論拠、切り口等はいくらパクってもよいが、やはり自分なりの表現で書かなければならない。

そして、参考にしたのであれば、それを参考文献等で記載しておくのが本来の正しい姿である。

そして、他人の文章をそのままコピペで写した場合、引用という形で出所を明らかにする必要がある。

一部であっても、そのままもってくると立派な盗作・剽窃になりかねない。

元ネタがインターネット上にある場合、技術的にも発見が可能になりつつある(その文章を丸ごと検索にかけて全文一致でパクリ元が出てきたりすると、パクリ行為がばれる可能性がある)。

一方で、盗作・剽窃の判定が可能か否かといった観点でみると、表現や助詞を変えてあると、これはなかなか難しい。

検索や全文一致機能では見破れないからだ。パクリの割合にもよるが「怪しきは罰せず」の立場で考えると「アウト!」とはならず「グレーゾーン」あたりに落ち着く(→盗作疑惑として問題が顕在化したときに、それを判定する人の心証に依存するだろう)。

また、メタパクリの場合、引用や参考文献として特に明記しなくてもパクリ元を探すのは容易ではないし、記述においては自身の創作と考えることができるので問題なしとした。

パクリの程度 判定
テーマをメタパクリして設定するが内容は自分で作成 問題なし
目次や論拠の流れをメタパクリして構成するが内容は自分で作成 問題なし
内容のほとんどをメタパクリするが主役(※)を置き換えて内容は作成
(※例:トヨタを日産におきかえる)
ほぼセーフ
一部の章や項目だけ他人のレポート・論文をコピペし、表現や助詞を多少変えて(「は」を「が」に変換等)引用を明示しなかった グレーゾーン
一部の章や項だけ他人のレポート・論文をコピペしてそのまま使い、引用を明示しなかった ほぼアウト!
他人のレポート・論文を全文コピペして表現や助詞だけを変えた ほぼアウト!
他人のレポート・論文を全文コピペして名前と学籍番号だけを変えた アウト!

以上、危険性を踏まえつつ、ネット社会のルールに則り、メタパクリを大いに活用してレポート・論文に取り組もう。

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