卒論 Tips2 テーマ選択について

どうやってテーマ(題目)を選べばよいのだろうか?

レポートではテーマが決まっている場合もあるかもしれない。

また卒業論文でもゼミや研究室によってある程度分野は限られてくるかもしれない。

だが、それらは選択の幅が大きいか小さいの違いであり最終的に自分で「何に着目して書くのか」、「そこでは、何がメインテーマになるのか」を選択しなければならない事には変わりはない。

特にテーマ設定について自由度の高い卒業論文の場合、取り組み始めてまずぶつかる悩みどころの一つである。

このTipsでは、先輩がどうやってテーマを選択したのかを具体的に見ることで考えてみたい。

その前に一つだけ留意点をあげておきたい。

卒論・レポートを指導する教授に「テーマ選択」についてその留意点を聞くと100人中、99人が指摘する事がある。

それは、「大きすぎるテーマはダメ!」、「テーマは小さく具体的に!」ということである。

この点は黙って従った方が賢い。
なぜなら、テーマが大きすぎると以下のような状況に陥り、早晩その論文は破局を迎える事になりかねないからだ。

  • 手に負えなくなる(時間がいくらあっても終わらない)
  • そこで、思考が止まってしまってなかなか進まなくなる
  • 途中で何をやりたいのかが不明確になり結論が導き出せない、もしくは論点がぼやける

具体的な例をあげて見ていこう。

テーマが大きすぎる例と、絞り込みのステップについて、テーマ案「情報技術の進歩が日本社会をどう変えるか?」について見たのが以下の表である。

テーマ例 コメント(変更点)
情報技術の進歩が日本社会をどう変えたか? 膨大な観点から見る必要があり何年あっても終わらない。
情報技術の進歩携帯電話の普及
携帯電話の普及が日本社会をどう変えたか? これでも卒業論文としては大きすぎる。
日本社会大学生の生活
携帯電話の普及で 大学生の生活はどう変わったか? 論点をもう少し狭くした方が深い考察が可能。論点を絞る余地がある。
大学生の生活恋愛事情
携帯電話の普及で 大学生の恋愛事情はどう変わったか? アンケート/事例調査を行うのにも具体的であり、背景の考察、論点抽出から見て深い分析が出来そうである
恋愛事情仮説ベースへ
携帯電話の普及で 大学生の恋愛は○△になった のではないか? 仮説に基づいた具体的な考察が可能

なお、テーマと 論文のタイトルは異なる。卒業論文のタイトルなどは、書き終えた後で内容と照らし合わせて考えればよいことであり、大局的なタイトルと、具体的なテーマを示す副題を付けてもよい。

どのようにしてテーマを選択するのか?

次に、先輩たちはどのようにしてテーマ選定をしたのか、卒業論文のテーマをメインにみてみよう。

多くの場合、素朴な疑問や好奇心・興味を起点にしており、“なぜ?どうして?(why)どのようにすれば?(how)、こうじゃないの?”といった疑問形が根底にあると言える。

これまで受けた授業の中や、日頃見聞きしたこと、個人的に関心をもっていること、これまで見た論文の中で気になったこと、社会的な要請が背景にある場合、学術的にホットな論点、きっかけは色々だが、自分が疑問に思ったことを取り上げて、それを明らかにするために研究するのが楽しくやれるこつだろう。

では、以下に先輩の事例をみてみよう。

【表:起点と卒論テーマ】

専攻 起点(素朴な疑問形) 卒論 テーマ
文学 Hamletが心の奥底から本当に愛していたのは、恋人Opheliaと母親Gertrudeどちらだろうか? Hamletの愛
文学 本当は残酷であるとか、性的なものであるとか、様々な物議を呼んでいる「昔話」って本当はどうなのか? 昔話における思春期の主人公たち-グリム童話の場合ー
英文学 どのようにすれば、インターネットを使って効果的な英語教育ができるのか? インターネット環境を利用した英語教育システムの試行と評価
歴史学 ローマ帝国の祖,ユリウス=カエサルってどんな人だったのか? 「ガイウス=ユリウス=カエサル」
社会学 子供にとって、死は遠い存在なのだろうか? 子どもに対するDeath Education
法律学 学校教育の中で人権侵害の可能性が結構、高いのではないか? 学校教育における児童・生徒の人権
法律学 民法第110条表見代理は、どのような法理によって規律されているのか?またその成立要件をどう考えるべきか? 民法第110条の表見代理と善意無過失の要否
政治学 多数決の有効性はどうなのか?今の制度は、本当に民主主義といえるのか? 民主政治の在り方
商学 粉飾決算って、どうやれば見抜けるのか? 粉飾決算に関する一考察
経営学 経営学の組織論と兵法は似ているのではないか? 組織論への兵法からのアプローチ
医学 健常高齢者のライフスタイルと余命にはどんな関係があのだろうか? 高齢者の生命予後、活動的余命と日常生活自立度、身体・社会活動因子との関連について

(なお、上記「卒論テーマ」にあげた論文の「概要」と「特徴」はトップ画面>卒論・レポートデータベース>にて紹介している)

しかし、単純に素朴な疑問を起点にすればよいかというと、そうではない。少なくとも、ある程度の専門知識を持った上での疑問でなければならない。

どのようにしてテーマを選択するのか?

ある程度の専門知識を備えた上の疑問でなければならない。事例をもとに見てみよう。

素朴な疑問1
古事記って誰が書いたのだろうか?

このような疑問では、卒論やレポートの題材には成りえない。

“そんなの調べればわかるだろう!”という事である。

そして、ある程度、この分野についての知識がついてくると・・・

素朴な疑問2
古事記の中に出てくる○△は、どのような解釈をすればよいのだろうか?

となってくる。

少々深まってきた感があるが、これも関連書等をある程度調べてゆくと、“一般的にはA説があり、その他にB説がある。だが、A説が~~の理由で有力である。”といった事がわかってくる。

「この両説に異論を唱え、新たな説を抽出する」テーマや、「どちらが正しいかを評価する」といった切り口はテーマになりうるが、新たな説を出すには余程の根拠が無い限り難しい。

この先、調べてゆけばゆくほど、疑問は解決されてしまう恐れがある。

情報収集、先行研究分野の下調べをすればするほど、自分と同じ疑問を持った人は過去に存在しており、そのほとんどは解明されている事実にぶつかるものであろう。

情報収集・下調べ(下図②)の緻密さと背反する性質をもつため、どこで折り合いをつけるか悩むかも知れない。

卒論テーマの設定

だが、ここで、参考程度にテーマ選択時の物差しについて示すと、専門分野の教授に、疑問をぶつけてみて

「わからない」

「明確にはわからない」

という答えをもらえるような内容であればテーマとして妥当であろう。

尚、わからない理由として

  • 誰もそのような疑問をこれまで持ったことがなかったからわからない
  • 時間をかけて調べて検証したわけではないから明確ではない

といったものであれば、卒論の題材の起点として、よい疑問形だといえる。

そのようなテーマを見つけて、時間をかけて、仮説を立て検証し、疑問を解決してみよう。

なお、レポートの場合、そこまでしなくても大丈夫ということが多い。

それは、「自分で調べてみる」という調査自体の訓練が目的の大半を占めるからである。

先生も、将来の「卒業論文」に向けたトレーニングと位置づけているのだろう。持っている時間と、余力をはかりながら、どこで折り合いをつけるか考えよう。

テーマ探しに迷って時間が無くなる位であれば、何でもよいから決めてしまって走り出そう。走り方、走った量を見せることが重要である。

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